ライ・クーダー(音楽家/『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』)

  • わたしはミャークの老人たちが羨ましい。
  • 小さくてもこんなに完全で幸せな世界を持っているのだ。
  • 汚れた世の中なんて気にかけたこともないだろう。
  • 彼らの表情を見て、このイカしたファンクを聞けば判る。
  • ミャークはきっと最高の所だろう。
  • 賭けてもいいよ 。

グレゴリー・ルード Gregory Rood (映像作家、TOMATO)

  • 日本の南海の島、その失われた音楽とシャーマン達の文化に触れる旅。

 
 

鳴り止まない拍手と歓声。スイス、第64回ロカルノ国際映画祭での快挙。

グランプリに次ぐ「批評家週間賞 審査員スペシャルメンション2011」を受賞。

 
 沖縄県宮古諸島。ここに沖縄民謡と異なる知られざる唄がある。それは、厳しい島での暮らしや神への信仰などから生まれた「アーグ」と「神歌」だ。その唄は宮古諸島に点在する集落の中でひっそりと歌い継がれてきた。特に御嶽での神事で歌われる「神歌」は、やむことのない畏敬の念をもって、数世紀に渡り口承で熱心に伝えられたものである。
 ことは音楽家の久保田麻琴が、島でそれら貴重な唄に出会ったことに始まる。本作は、その唄を生んだ人々の暮らしを追うなかで、失われようとしている根源的な自然への怖れと生きることへの希望を見出したドキュメンタリーだ。監督の大西功一は、秘められた島の神事を追い、生活と信仰と唄がひとつだった時代を記憶する最後の世代である老人達を温かく見守りながら、かつての島の暮らしをスクリーンに鮮やかに浮かび上がらせた。

老婆達が神唄を歌う時、不思議な懐かしさがすべての人々の心を打つ

ャークには、今まさに失われようとしている大切な「記憶」がある。老婆達は語る。かつて厳しい生活と信仰と唄が切っても切り離せないひとつの時代があったことを。そして今も老婆達の心を映すかのように、この島の御嶽では、神事の火が数百年に渡り人から人へと受け継がれ、神女達が生きる願いとともに「神歌」を神に捧げている・・・。2009年、九十歳を超えた車椅子の老婆達が島を出て東京へと渡る。コンサートホールの舞台に立ち、禁断の神歌を歌うために。満場の観客を前に彼女らは力を振り絞り、歌う…。ミャークの老婆達が歌い継ぐ神歌に触れられた貴重な機会は、おそらくこれが最初で最後となるであろう…

【沖縄宮古島】

東京から南西に2040km、沖縄本島から南西に310km、台北から380kmのところに位置する人口およそ5万5千人の島。霊場である御嶽での神事は、島外の者には容易く触れることのできない神聖な行いとされてきた。また、薩摩支配下の琉球王府によって1637年から1903年まで課せられた「人頭税」のため、人々は塗炭の苦しみを 味わったとされる。

2011年8月、第64回ロカルノ国際映画祭、批評家週間部門に歴代初の日本映画として正式出品。 世界から選出されたドキュメンタリーの秀作が並ぶなか、上映後、もっとも熱い拍手と喝采の声を受け、グランプリに次ぐ「批評家週間賞 審査員スペシャルメンション2011」の栄誉を受けた。